水戸にて

 水戸に来て一週間立った。先週金曜日はとにかく早く帰りたいばかりで陰鬱な気持ちになっており、たった数日家を離れただけでこんなにダメになるなんて俺は一体就業することができるのか、とさらに暗い気持ちになっていたが、よく考えるとこの帰りたいというのはすなわちゲームをやりたいだけであり、それを理解してからは非常に心が平穏になった。昔からゲームを一度始めるとクリアするまで没頭してしまう性質で色々不利益が生じていたので、うまい具合に付き合えるようになりたいと常々思っていたが、やはり意志薄弱な自分にはうまくやるなど到底無理であった。齢23にしてゲームをやめられないなど情けない話ではあるが、このように半強制的に離れる機会を利用してゲームをやらないという癖を作りたい。が、今週末の大半はもうパッドを握って過ごしているだろう。

 

 月曜夜。水戸に来てからの楽しみはとにかく飯であり、水戸駅は千葉よりも駅近くにいい具合の飲食店が多いようで、毎日その日食べたいものでグーグルやらツイッターやらで調べて食べに行っている。日曜昼にはかつ丼を食べ、食べ過ぎて夕飯を抜いたため二日ぶりの夕食となるが、なぜかまたカツを、今回はカツ煮を食べに行った。異様に暗い商店街の中にある店に入ると、客が数名のほかに狭い厨房の中でおじさん、おじさん、おばさんが料理を作ったりデカい声で客と話したりしていた。カウンターの奥のところに案内されると隣にテレビを見ながらおじさんの一人と話しているおじいさんが座っており、最初は常連客が何も頼まずにしゃべりに来ているんだろうなと思った。しかし、注文をしてから料理が来るのを待っている間にそのおじいさんがよっしゃ、そろそろ行くか…と言ったので、ああ帰るんだなと思っていたらおじいさんはそのまま厨房に入り込んでじゃがいもを調理し始めた。常連客に見えたおじいさんは店員であり、最終的には狭い厨房ではおじさん、おじさん、おばさん、おじいさんの4名がせめぎあいながら働いていた。しかも全員仲がよさそうというかそれ以前にそもそも声が馬鹿デカく、飯を食いに来たのに馬鹿デカい会話を聞かされている状況に混乱した。

 料理が来るまで少し時間がかかり、客は俺だけになった。ついに来たカツ煮は量が多く肉も米も旨かった。ごはん欲しかったら言ってねと言ったおばさん定員の笑顔があまり性格が合わないためもう何年もあっていない父方の祖母に激似だった。その日は午前中大雨が降っており、料理が来る前におじさんの一人とおじいさんが○○ちゃん来れるかな~と話をしていたのだが、飯を食べているとおばさん二人が来店し、どうやらその二人のうち一人がその○○ちゃんらしかった。このおばさん二人の登場により店内は俺を除いて大盛り上がりとなった。新しいおばさん二人の声量は普通だったが、古いおばさんが盛り上がって更に声がデカくなった。

 食べ終えて店を出るとき、新しいおばさん二人からもありがとうございました~と言われた。どうなっているのか終始わからなかったが、飯はうまくデカい声も聞こえるのでおすすめです。楽天というお店でした。